JSJのコラム

東京外国語大学 キャリア支援取材記事

東京外国語大学 キャリア支援取材記事

今回は東京外国語大学の外国人の就職支援について、学生課の大跡尚美様(キャリア支援係長)及び外国人の就職を専門に担当する中村拓海様(グローバル・キャリアセンター 留学生専任キャリアアドバイザー)にお話を聞いてきました。大学の中に外国人の就職サポートの専任者がいる学校はほとんど無いので、とても貴重なお話を聞かせていただきました。
 

 

NSA)

今回はお忙しい中お時間を頂戴し、ありがとうございます。東京外国語大学が行っている留学生への就職支援について、色々お聞かせ頂ければと思います。まず現在の、交換留学生と新規留学生の大体の人数についてお教えください。

大跡様)

当校は現在、72カ国の215機関と協定を結んでいます。具体的にいうとアジアは18カ国・66機関、ヨーロッパは28カ国・90機関などです。現在は、学部正規生187名・大学院正規生245名・研究生116名・交換留学生が217名、その他31名で合計796名の留学生がいます。(※2019年5月1日現在)
 

 

NSA)

他の大学は交換留学生が多いですが、外語大は学部・院ともに正規留学生がとても多いのですね。この方々は卒業後、そのまま日本での就職を希望する方も多いのでしょうか。

中村様)

そうですね。細かく数字をしっかりと管理している訳ではありませんが、私の印象では日本で就職を希望しているのは、留学生の大体7割程度です。その中で実際に就職が出来るのは8割程度でしょうか。

学部卒の学生は就職成功率も比較的高いですが、大学院から本学に入った生徒は、卒業までに2年しか無いのでなかなか時間が足りません。院卒の留学生が就職活動を成功させるには、大学院入学と同時に就職活動も始めるくらいの意識が必要です。

NSA)

交換留学生の中にも就職希望者はいらっしゃいますか?

中村様)

数は少ないですが、交換留学で日本でアルバイトなどをした経験から「日本で就職したい」と考える留学生もいます。学生によっては帰国して卒論だけ出せば卒業できる場合もあるので、一時帰国して卒論を出して、また日本に戻って就職するケースもありますね。
 

 

NSA)

日本を魅力的に感じてくれたのだと思うと嬉しいですね。日本での就職を希望している学生さんが、最初に中村さんのところに来る段階ではどれくらい就職に関して絞り込めているのでしょう?「この業界でこんな仕事をしたい!」というイメージもしっかり持っていますか?

中村様)

いえ、そこまで具体的にきちんとイメージできているのは、全体の2,3%です。ほとんどの学生が「私は日本で働くことができますか?働けるとしたら何ができますか?」というレベルからのスタートです。

NSA)

そうなんですね。明確に希望を持っている方はそんなに少ないのですね。そこから、業界研究などをして「働きたい業界」を見つけ、具体的にやりたい職種を探して、企業に応募して…というのは、かなり長い道のりになりますね。
 

 

中村様)

仰る通りです。「日本で就職できる?」というスタートから実際に就職するまでは、非常に長いプロセスになります。が、今まで多くの学生を見てきた中で、就職したい留学生は大体この3つに分類されます。このどこにいるのかを見極めるのが最初のスタートになりますね。

日本語レベルが非常に高く、日本の学生と同じ方法で就職活動ができる
※本人の希望もある程度明確
日本式の就職活動はちょっと難しいため、個別でのマッチングが必要
※本人の希望は明確では無い
何でもいいから日本で働きたい
※本人の希望は明確では無い
 
学生がこのどこに当てはまるかによって、やるべきことは変わってきます。特に具体的な仕事のイメージが無い2,3の場合は、少しでも多くの社会人に会ってイメージをしてもらうことが重要ですね。

NSA)

中村さんの今までの膨大な経験と脳内データベースで、しっかりカテゴライズされ、それぞれのやるべきことも明確に見えているのですね。中村さんの様々な情報とコミュニケーションが非常に重要だということが分かります。

中村様)

そうですね。だからこそもう実際に働いている卒業生の声を聞くこともとても重要です。

私が一番心掛けているのは、とにかく実際に働いている卒業生と一人でも多く会わせることです。私から留学生に伝える内容は制度的な部分にしていて、実際に働いた生の声は同じ留学生の視点で先輩から伝えてもらっています。働いてみて困ったこと、大変なことを伝えて、しっかり覚悟をもって就職した方が、就職後の満足度が高いですから。

NSA)

期待だけで入ってしまうとショックが大きいのは日本人も同じですね。今は具体的には、どのような企業から「留学生が欲しい」という需要が多いのでしょうか?
 

 

中村様)

企業が留学生を欲しいニーズとしては以下の3つに分類されると思っています。

・優秀であれば国籍を問わない

・外国人が入ることで組織を活性化させたい

・将来海外支店を出すなどの事業戦略

その上で最近一番多いケースは、ここ数年で技能実習生を採用し始めた企業です。数人技能実習を採用してみたらとても良かった、もっと採りたいから取りまとめの外国人に来て欲しい、という需要です。

NSA)

確かにそういった需要はとても増えていると弊社でも感じています。が、まだまだ前例が少ないのでなかなか難しいですよね。

中村様)

そうなんです。要は日本人と、様々なバックグラウンドを持つ技能実習生の調整役なので、中間管理職に近いポジションです。その本人も外国人なので、日本人特有の文化が分からなかったり、日本人は空気を読むというか、あまりはっきり言わないところもあるので、その辺りの仕事の進め方が非常に難しいようです。
 

 

NSA)

上と下との調整役はなかなか日本人でも難しいポジションです。入ってからも悩むことが多いと思いますが、何か対策はされていますか?

中村様)

入社前の期待値と現場での落差が満足・不満足に繋がるので、入社後の失望を最低限にするためには、既に働いている先輩の話をたくさん聞くことを勧めています。入社後に起き得る問題点を正しく把握して期待ばかりを大きくしない、これに尽きると思います。そのために「日本人でも留学生でも、一人でも多くの先輩の話を聞いて欲しい」と伝えるとともに、私もその機会をなるべく多く提供しています。

NSA)

今まで過去に色々な国の留学生が日本企業に就職していると思いますが、「この国の人たちは日本企業に合っているな」とか、逆に「この文化だとなかなか難しいな」というのはありますか?

中村様)

これは完全に私の主観になってしまいますが、スキルアップ・キャリアアップのためにどんどん転職するのが珍しくない国の出身の人は、日本企業でも成長を求めているので短期間で転職を繰り返す傾向があるように思います。またせっかく良い大学を出ても母国で良い仕事が無い国の場合は、「一つの会社で頑張ってみよう」という人が多かったり、日本に対して憧れを持ってくれている国の出身者も長く働く傾向がありますね。

NSA)

国民性というか、その国の文化・働き方でも色々と変わってくるのですね。今までご覧になっていて「こういう留学生は就職が決まりやすい」というタイプはありますか?

中村様)

「極度に日本人化していれば、どこでも受かる」というのが私の持論です。言語はもちろんですが日本文化や日本人のコミュニケーションの特徴などをしっかり理解していれば、どこでも受かります。ただこういった部分は、大学で学べることではありません。
 

 
その場で「今」求められていることや、「目的」を的確に把握して正しく振る舞うためには、日本人との接触時間と接触回数を増やすしかありません。ですので、ぜひ学外で色々な場に出て様々な経験を積んで欲しいですね。

NSA)

それでは最後に、日本で就職をしたいと考えている留学生へのアドバイスをお願いいたします。

中村様)

就職活動はチーム戦なので、決して一人で戦わないでください。私はいつも学生に「日本人の仲間を最低5人はつくるように」と言っています。年齢性別様々な日本人と付き合うことで日本の文化がよく分かったり、色々な情報も入ってきます。実際に働き始めると大変なことも多いですが、夢を持って頑張って欲しいです。

【東京外国語大学沿革】

起源は江戸幕府によって1857年に開校された蕃書調所までさかのぼり、1873年に東京外国語学校として5学科(英・仏・独・露・清語)を設置。

現在は言語文化学部(2018年度入学まで:言語・情報コース、グローバルコミュニケーションコース、総合文化コース、2019年度入学以降:超域コース、地域コー ス)・国際社会学部(地域社会研究コース、現代世界論コース、国際関係コース)・国際日本学部、大学院総合国際学研究科などから成る。広い視野と優れた言語 運用能力、世界の諸地域に関する深い知識を備え、日本と世界を結ぶ人材の養成を目指している。
 
<PROFILE>
◆学生課 大跡尚美様(キャリア支援係長)

◆中村拓海様 留学生専任キャリアアドバイザー
● 株式会社Sociarise(ソーシャライズ) 代表
日本全国の大学・大学院、専門学校、日本語学校で外国人留学生の就職支援を行う。 働くための日本語カリキュラムの開発や企業の外国人に関わる人事コンサルティング にも携わる。 また、各政府省庁への協力、支援、提言等を行っている。

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NSA 編集部